この人に聞く

介護用トイレの電子部品開発がきっかけ

1回使用ごとに汚物をパック処理

ハマ電子は社名の通り、商用車のABS関連部品や制御基板の製造・組立を行っている。そんなハマ電子が、なぜ、備蓄用トイレ「トイパックⅡ」を手掛けているのか、乾惠介社長に話を伺った。

自動車部品を製造する会社がなぜ?

自動車部品や基盤の製造などを行っている弊社が、なぜ、災害用の備蓄型パック式トイレを製造しているのか疑問を持たれる方も多いと思います。弊社はもともと電子部品を製造していた企業でしたが、2020年に梱包材を手掛ける企業によって事業承継されました。私もその(梱包材を手掛けてきた企業の)親会社の出身なのですが、備蓄用トイレ「トイパック」の開発に着手したのは、事業承継される前のまだ、電子部品だけを手掛けていた頃に遡ります。

当時、開発に携わった者に聞いたところ、元々は2004年に、あるメーカーが介護用いす(パック式トイレ)の開発を取引先と進めていたのですが、進展が無かったために弊社に声が掛かり、トイレの中の電子部品の開発に取り組むことになったそうです。2007年には実際に製品発表まで行ったのですが、販売直前にそのメーカーが撤退したため、私どもも生産を終了したということです。そのため、現在の製品は〝Ⅱ〟となります。

しかし、せっかくの研究開発をなんとか活かそうという思いがあり、製品化について模索を続け、2010年にSAITEC(埼玉県産業技術総合センター)にも相談するなどして自社製品としての開発検討をスタートしました。その後、東日本大震災の半年後の2011年10月にトイパックⅡを発表し、翌2012年6月に販売開始しました。

避難所のニーズに合わせて改良重ねる

販売後も様々なニーズを受けて改良を続けています。例えば当初は100V仕様でしたが、震災時に電力不足になったことを踏まえて、自動車のバッテリー(シガーソケット)も対応できる12V仕様に変更しました。災害時の避難所には発電機(非常用電源)があるという前提で開発してきたのですが、非常用電源がない避難所も数多く散見されます。そこで、自動車のバッテリーからなら比較的手軽に電気をとることが出来るだろうと考えて改良しました。

また、排泄物をパックにするシートも開発には苦労しました。排泄後に熱を加えて密封するのですが、温度が低いと密封できませんし、高すぎると溶けてしまう。普通のシートでは匂い漏れも防げないようで、ちょうどいい厚さと温度を試行錯誤したと聞いています。現在は土にかえる素材のシートも提供しています。おかげさまで、近年では、介護用やBCPなど災害備蓄用に需要が増えています。

帰宅困難者への備え

都市部では、災害時に多くの帰宅困難者が発生すると言われています。民間企業等もそうした方々を受け入れることになりますから、今後は民間企業にも備蓄していただけるよう働きかけています。

また、昨今のキャンプブームで、キャンピングカーやその他レジャーにも使っていただいています。シェルター代わりにキャンピングカーを購入してトイパックⅡを購入いただいた方もいらっしゃいます。そうしたニーズにも合わせていきたいと考えています。

プロフィール

もともと梱包会社に勤めていたが、2020年に同社がハマ電子を事業承継するとともに、同年8月に代表取締役に就任。備蓄型トイレの製造を手掛けることは本人も想定していなかったというが、社会貢献の意識からも、防災を事業の柱にすることを決意。

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